時計界に足りない「脳みそ」について
- TAKE

- 2月13日
- 読了時間: 3分
「復刻」の先にある、現代の挑戦が見たい

最近、腕時計ブランド各社の新作発表を眺めていると、
なんとも言えない「既視感」に襲われることがある。
「あ、また復刻モデルか。でもまあ、格好いいよな」 とは思います。
ヴィンテージ回帰。ヘリテージモデルの再構築。
確かに、過去の名作には完成された美しさがある。
特にメンズの機械式のデザインは、1950年代〜70年代に「一つの黄金期」を迎えてしまっている。
その時代へのオマージュ。
それは失敗のない「一つの正解」だと思います。でも、ふと思う。
腕時計が産声を上げて120年以上が経ち、
これほどまでに素材や技術が進化している今、
本当に「過去の焼き直し」だけで満足させられてていいのだろうか?
・素材は「装飾」ではなく「未来への武器」
例えば、シャネルのJ12が登場した時の衝撃を思い出してみてほしい。
あの時計が凄かったのは、決して突飛なデザインだったからではない。
むしろデザインの根底にはクラシックな美学が流れていた。
凄かったのは、それを「フルセラミック」という
未知の素材で包み込み、「傷つかず、変色しない」という、
これまでの高級時計が避けて通れなかった弱点を、
技術でねじ伏せ、そこにジュエリーのような価値観をも植え付けたことだ。
今のメーカーに、その「挑戦する意識」がどれだけ残っているだろうか。
最新のカーボンやセラミックを、単なる「目新しいトーン」や
「限定モデルのスパイス」として使って終わっていないか?
もちろん、全く挑戦がないわけではない。
例えば、オメガの「マスター クロノメーター」による圧倒的な耐磁性能や、
タグ・ホイヤーがカーボン製ひげゼンマイで見せた技術革新。
あるいは、IWCが「セラタニウム」という新素材で外装の常識を
塗り替えようとしていることも知っている。
でももし、ロレックスが「これが21世紀の正解だ!」と
フルセラミックのサブマリーナーを掲げたら、世界はどれほど熱狂するのだろうか?
どれほどワクワクするのだろうか?
・「気を付けて使ってね」という甘えからの脱却
実用面でもそうだ。
現代は、かつての時計師たちが想像もできなかったほど磁気に溢れている。
スマホ、PC、タブレット。そんな日常の中で、いまだに
「機械式は磁気に弱いから、気を付けてね」
とユーザーに我慢を強いるのは、メーカーとしての「甘え」ではないか。
「伝統的なムーブメントだから仕方ない」と蓋をするのではなく、
「現代の素材を使って、磁気なんて一切気にしなくていい機械式を作ったよ」
と言い切る強さが欲しい。
磁気を帯びにくいセラミックをケース構造に組み込んだり、
パーツ一つ一つを次世代素材で置き換えたり。
市場を新しい世界へ力技で引き摺り込むような、
そんな泥臭い「未来への挑戦」を、筆者は見てみたい。
・100年後のヴィンテージを、今創るということ
筆者は決して、伝統を否定したいわけではない。
むしろ、その伝統的な美しさを「現代の技術でどう解釈し、どう守り抜くか」という部分に、
メーカーの本当の「知性(脳みそ)」を感じたいのだ。
過去の貯金で食い繋ぐのは、もう十分だ。
100年後の時計愛好家が、2020年代を振り返ったとき。
「あの時代の挑戦が、今の当たり前を作ったんだな」
そう語り継がれるような、未来への意志を感じる1本に、筆者は出会ってみたい。



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